2011年05月07日
新任教員・田中英資准教授(文化人類学/文化財科学)
現代文化学科では、2011年より田中英資准教授(文化人類学/文化財科学)が着任し、観光文化分野、交流文化分野の科目を担当しています。そこで、今回は田中准教授による自己紹介をお届けします。
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4月より現代文化学科の教員スタッフの仲間入りをしました田中英資です。歴史を現在の人々がどのように考えているかということに興味をもったことがきっかけで、ギリシャやトルコにおける遺跡保護に関わる問題を研究してきました。また、大学卒業後7年ほど英国の大学院に留学しており、その間、研究のためにトルコに滞在したこともあります。必ずしも観光を中心に研究してきたわけではありませんが、歴史的な建造物や遺跡のような過去の痕跡は、我々が先祖から受け継いできた「文化遺産」と考えられて、この遺産としての価値が重要な観光の資源とみなされます。こうしたつながりから、文化遺産保護の問題を観光開発の問題としてもとらえて調査するようになりました。
文化遺産と観光の問題を扱いながら私が特に面白く感じているのは、今私たちが文化遺産だと考えているものははじめから文化遺産だったわけではないという点です。過去の痕跡に対して私たちが、なんらかの価値、何らかの歴史的意義を認めることでそれらは「文化遺産になる」のです。そのような文化遺産という価値は、国家、地方自治体、研究者、地元の人々、観光産業、(ユネスコのような)国際機関など、ローカルやグローバルの様々な次元の集団の利害が絡み合う中で決まってくるダイナミックな側面があります。担当している3年生、4年生の演習でもグローバルとローカルのつながりから観光や文化遺産、そしてそれらをめぐる人々の動きを考える見方を学ぶことに力を入れています。
また、その他の授業では観光地理の基本を勉強する科目(「ワークショップ現代B&C」)や、私の研究対象であるトルコやギリシャなど地中海地域の社会と文化を扱う「地中海文化研究」なども担当しています。初めて見聞きするような習慣や考え方についての話をすることも多くなりますが、少しでも興味を持ってもらえるような工夫をしていきたいと考えています。
さて、最初に留学経験があることを書きましたが、外国人として英国やトルコに暮らしてみて、自分が想像していた以上に社会は多様で、多くの人々が国境を超えて移動しながら暮らしていることを実感するようになりました(私自身がこうした移動する人々の一人でもあったわけですが)。一方で、様々な文化的背景をもつ人たちと生活を共にしたことでいい面も悪い面も含めて日本の人間であることを意識させられる機会もたくさんありました。授業の中でも、私の留学経験についてお話していければと思っています。また、留学に関心がある人へのサポートもできればと考えています。
最後になりましたが、福岡女学院大学に着任してまず感じたのは、学生と教員の距離が近いことです。お互いの顔と名前が一致するようなアットホームな雰囲気のなかで、一人一人に合わせたきめ細やかな教育がなされているような印象を持っています。まだ着任して日も浅く、なかなか大変ではありますが、私も一日でも早く学生のみなさんの顔と名前が一致するように努力していきたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします。
〈留学していたケンブリッジ大学〉
〈トルコでは古代の都市遺跡の上に現代の人々が暮らしています〉
〈旅先でみかけたネコの写真を撮るのが好きです〉