2013年02月07日
「百読百鑑」レビュー 『それから』夏目漱石 by メロンパン
いつの時代でも、どんな時でも、人は変化していく。それがいい事なのか、悪い事なのかはさておき、人は絶えず変化する。そんな人の心の変化を、明治40年代の日本を舞台に描いた小説がある。夏目漱石の「それから」だ。
主人公の代助という独身の青年が、ある時、自分は三千代という女性を愛しているということに気付く。三千代は、代助の学生時代からの友人である平岡という男の、妻だった。そして3年前、平岡に頼まれ、平岡と三千代の結婚の仲立ちをしたのは、代助だった。
社会的に許されない、しかし諦められない愛を自分の中に見出してしまった代助は、どうするべきかと悩む。そして、自分はその二人の仲を取り持つ前から、三千代を愛していたということに気付く。
3年前、代助は自分の想いを犠牲にして、平岡の望みを叶えた。しかし、年月を経て、道徳の退廃していく社会とともに、同様に変わってしまった彼が、平岡に体して本当にすまないと思うのは、平岡の妻を愛してしまったことより、その3年前の、自分が平岡に対して「義侠心」を抱いたことなのだった。
私は、歳月や時代とともに変化する登場人物や、その変化によって起こる様々な事象を「悲しい」と思った。どうにかして、その事象を避けられなかったのか、と。しかし、もし自分がその立場に立てば、やはり、それらのことをどうにもできないかもしれない。
この作品は、明治という激動の時代を背景に、そのような真情の変化を、美化せず、むしろ社会的・道義的に「悪」とされる感情でさえも、リアルに描く。そのため、読者の方も、共感や驚き、憤りなど、様々な感情を抱いて読むことができる。また、この小説の背景にある、その頃の日本の社会についても考えることができる。
禁断の愛に陥ってしまった代助は「それから」、最終的に、どう変化し、どのような行動に出るのか。ぜひ一度、読んでみてほしい。
投稿時間:2013年2月 7日 19:09 | 固定リンク
2013年02月07日
「百読百鑑」レビュー 『千と千尋の神隠し』宮崎駿 by 乙部
2001年7月20日に日本で公開された、ジブリ・宮崎駿監督の作品のひとつ。これまでのジブリ作品の中でも、本作品は日本での映画観客動員数が最多。その勢いのまま世界へと飛躍し、世界各国で数々の名誉ある賞を受賞した。世界的にも有名な作品である。
主人公である10歳の平凡な女の子「荻野千尋」は、引っ越しの途中、両親とともに不思議の街へと迷い込んでしまう。そこで千尋は謎の少年「ハク」に導かれ、街の掟を破り豚になってしまった両親を救うべく「湯婆婆」が営む湯屋で働くことになる。躓きながらも働き手として懸命に掃除をする。オクサレ神と化してしまった河の主や拙い意思疎通しかはかることのできない「カオナシ」を救う。周りの人に支えられながら、千尋は自分の力で道を切り開いていく。
観客のターゲットは子供たちである。私自身、小学校時代に母に映画館へ連れて行ってもらい、この作品を鑑賞した。幼いながらに作品から何らかの「思い」を感じ取り、感動して涙したことを覚えている。宮崎駿監督は、「ハクが千尋にしたように、あなたに親切にしてくれる人はきっとあなたの周りにいる。子供たちがどのように受け取ってくれるかは分からないが、そういうことを感じてくれたら嬉しいと思いながらこの作品を作った」と話している。
何度見ても飽きが来ない独特な雰囲気や細かい設定の中に色々な楽しみ方がある。不思議の街と現世界とを繋ぐトンネルの入口の色の変化、湯婆婆との契約書に千尋が自分の名前を書くシーンの誤字、千尋が湯婆婆の双子の姉である「銭婆」に貰った髪飾りの描写など、登場するキャラクター達の表情・心情を読み取りながら、時間の経過に伴う情景描写の変化に注意して観てみるのも楽しい。また、千尋が現世界へ戻る時のハクの動きなど、行動から読み取れるキャラクター達の心情の変化にも注目したい。この作品を観たことのある人も、観なおしてみると、新たな発見や感動があるだろう。
周りの人々や環境に支えられ、自分が今ここに在ることに感謝したい。人との関わりや出会いの大切さを教えてくれる作品である。
投稿時間:2013年2月 7日 19:08 | 固定リンク
2013年02月07日
「百読百鑑」レビュー 『千と千尋の神隠し』 宮崎駿 by 桃華
家庭の都合で転校しなければならない千尋とその両親は、移動途中に不思議なトンネルを見つける。そのトンネルの向こうには見たことのないような大きな城や、その下に街がある世界があった。そこで豚になってしまった両親を助けるため、湯婆婆のもと、油屋で働く千尋と、彼女の手伝いをするハクの物語である。
ハクは千尋に「自分の本当の名前を教えてはいけない」と忠告し、湯婆婆のもとへ送り届ける。千尋は湯婆婆に渡された紙に名前を書くとき、荻野の「荻」という字をわざと間違えて書いて渡す。そのシーンが印象的である。私はこの作品を小学生のころに何度も見た。わざと間違えるというこの行動があるからこそ、千尋は最後まで元の名前を忘れなかったのだ。作りこみの深さに感動する。
最初からトンネルの向こうの世界に住んでいたハクは、本当の名前を忘れ、その世界から抜け出せない。それにもかかわらず、迷った千尋を助ける。彼女が困った時に励ます優しさは、知らない世界やシステムで不安になる視聴者を唯一安心させる要素であるように思われる。
結局、千尋はトンネルを抜けたときに向こうの世界で過ごしたことやハクとの思い出、そしてハクの存在すら忘れてしまう。小学生のころに鑑賞したときは、千尋が両親を助け、元の世界に戻ってよかった、つまりハッピーエンドで終わったのだと思った。しかし、今になって思えば、確かに元の世界に両親と戻ることが出来たが、ハクとは永遠に別れなければならなかった。別れた直後のハクのことを考えると、胸が痛む。この作品は一見ハッピーエンドに見えるが、実は見方を変えれば、どうしようも無いほど悲しいバッドエンドだったのではないかと思う。ハクは終始千尋のことを励ましたが、最後には全てなくなってしまう。あえてそのような終わり方にした宮崎駿は、最高の映画監督である。
投稿時間:2013年2月 7日 19:07 | 固定リンク
2013年02月07日
「百読百鑑」レビュー 『宝島』スティーヴンソン by ルナ
ビリー・ボーンズという男が、宿屋の息子であり主人公であるジム・ホーキンズの宿屋に現れるところから物語は始まる。物語が進むと、ビリー・ボーンズは死ぬが、ジム、地主のトロリーニ、医者兼検事のリヴジー、一本足の元海賊シルヴァー、その他大勢の船員を連れて宝島に宝探しに行く。彼らは無事に宝島に辿りつく。シルヴァーと彼が連れてきた他の船員は、宝を一人占めするために反乱を起こす。幸運にもジムはその話を宝島に着く前に船の中で盗み聞きしていたので、ジム、リヴジー、トロリーニ、船長は宝島に着いたとき、難を逃れることができた。しかしそれから先もずっとジム側とシルヴァー側の戦いは続く。ジムはシルヴァーの人質にされる。彼らは船を取り合う。また、昔、ある海賊に宝島に置き去りにされた男ペン・ガンと出会う。様々な出来事があり、最後はどちら側が宝を得ることができるのか、そして無事に国へ帰れるのか、終始ハラハラドキドキさせられる。
私がこの物語の中で最も印象的だったのは、ジムがシルヴァーに人質にされている時のシーンだ。ジムが人質にされていると知って助けに来たリヴジーは、ジムに柵を飛び越えて脱出するように命じる。ジムはシルヴァーがどんなことがあっても自分との約束を破らなかったので、脱出を拒否した。私はこの勇気が凄いと思う。いくらシルヴァーが約束を守る男だからといって、ジムの命の保障はないわけで、そのまま残っていたら、殺される可能性は大いにある。それなのに脱出=シルヴァーを裏切る、と考えて人質のままでいることを決断した。私ならば、自分の仲間が助けに来てくれたら、間違いなく脱出するだろうし、他の人も大半はそうするだろう。彼ほど義理堅く勇気のある人間はそうそういない。
この物語では、ジムの知性、溢れんばかりの勇気、そして仲間を思い協力すること、時にハメを外すことの大切さを学べる。私生活に退屈・マンネリしている人は是非読んでほしい。一緒にジム達とスリル満点の大冒険へ出掛けよう!
投稿時間:2013年2月 7日 19:05 | 固定リンク
2013年02月06日
豊後大野市活性化プロジェクト:学生の研究発表
大分県豊後大野市の地域活性化について調査研究を進める豊後大野市活性化プロジェクト。初日の夜は、学生による研究発表です。学会主催の大会でも賞を受賞した4チームが発表しました。詳細は現代文化学科Facebookをご覧ください。http://www.facebook.com/fukujogendai#!/media/set/?set=a.416253145124429.97325.336851746397903&type=1
投稿時間:2013年2月 6日 22:53 | 固定リンク
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