2012年12月21日
応用演習Bにおける合同講演会:命の原点-生きる力を育む-
2年次生がいつもは10クラスに分かれて少人数で履修している応用演習B(必修)には、全員集まっての合同演習の時間が設けられています。12月5日の合同演習は、講師として堀尚子助産師(カナフ助産院)をお招きしての「命の原点-生きる力を育む-」というタイトルの講演でした。赤ん坊の人形と母親の骨盤模型を用いての堀講師のお話は、「おぉー」と教室にどよめきが起こったほどで、命が誕生するということ、生き抜くということの根源的な意味を問い直す機会になりました。
最近は、イクメンという言葉が登場して、男性が育児に加わることが勧められるようになりました。女親の育児の大変さを男親も担い分けましょうということでしょうか。ところが、助産師として、自宅で家族に囲まれての出産を介助なさっている講師のお話は、育児以前の、命の誕生の不思議さや女性の身体の神秘さに、さらには命の尊さに気づき直さざるをえないものでした。講演の後、「質問はありませんか」と言われても、命の不思議や神秘や尊さを確かめ直すには、沈黙するよりほかありませんでした。
科学が微視的な遺伝子の仕組みを解明し、技術が科学の知見を現実(生活感情)の問題の解決に適用するようになってきました。不妊治療や出生前診断もそうです。ES細胞そしてiPS細胞の利活用など、科学や技術の展開は生命の操作に及びかねないという状況があります。科学者や技術者のなかには、専門家としての自負からでしょうか「行けるところまで行くので、後は社会や市民の判断に委ねます」と言う者が大勢います。現在は、子どもを何人産むかが計画することになり、命が授かるものではなくなっている様子があります。それだけになおのこと、生き抜こうとすることの尊さや命が誕生することの不思議さを身をもって知っている女性たちには、生命の操作にかかわる社会倫理的判断に市民としての参画が期待されているのだと思えます。
(担当:長野(男性))