教員コラム9 「図録」守山惠子

メディア・コミュニケーション学科の1年生が全員一緒に履修している科目はいくつかありますが、そのうちの一つワークショップA(WSA)は、学科の教員全員が一緒に担当しているという点で、ユニークです。このWSAの今年度のテーマは「ミュージアム」です。最初の授業では、学生一人一人が「入学して、みつけたこと」を写真に撮り、発表しました。写真はそのいくつかです。その後、それぞれの教員の専門の立場から、ミュージアムを考えたり、ミュージアムで働いていらっしゃる方のお話を伺ったりしています。

 

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      「みつけたこと」 撮影:メディア・コミュニケーション学科1年のみなさん

 

さて、私がミュージアムとの関連で思い浮かべるもののひとつに「図録」があります。我が家には、これまで私や家族が行った展覧会の図録がいろいろあります。それを眺めていると、その展覧会の様子やその時に一緒に行った人との会話を思い出したり、展覧会ではあまり注意を向けなかった作品に改めて出会ったり、心打たれた作品ともう一度対話したりすることができます。実は、「これ以上我が家に図録を増やしてどうするの」という思いもあって、買おうかどうしようかと迷うことも少なくなく、迷った末に買わずに帰って後悔することもあります。我が家にある図録は、選ばれた思い出深いものたちだと言えます。ある時、美術史が専門の大学時代の恩師が我が家を訪れてくださって、「あ、これに行ったの?」とか「これはいつの?」などと図録を次々手にされながら尋ねられた時には、自分自身を見透されたような気がして、ちょっと恥ずかしかったのを思い出します。

先日、ふと手に取った図録は、『魂を揺さぶる人間の賛歌』という題の馬越陽子展のものでした。1994年に第17回安田火災東郷青児美術館大賞を受賞した記念の作品展の時のものです。ぱらぱらと図録をめくっていて、「意志(生きる)」と題した作品に気づき、魅かれました。20年前に図録を買っておいてよかったと思う瞬間です。なぜ魅かれたのでしょう。「人は、いろいろな闇から完全に離れることはできないけれど、闇を背にして、闇の重さも感じ、闇を背負いながら、なお、光に目を向ける」という「意志」を感じたからかもしれません。馬越陽子氏は、独立美術協会会員で、アートアニュアルオンラインの2012年、第80回独立展の案内に、出品作品が掲載されています。

http://www.art-annual.jp/othres/7939/ 2013.6.26アクセス)

 

WSAは、メディア・コミュニケーション学科の学生の皆さんにとって、ミュージアムを身近に感じ、ミュージアムについて考え、ミュージアムを理解するよい機会です。WSAをきっかけに、ミュージアムに足を運べば、きっと心に残る作品や展示品に出会えるだろうと思います。6月29日には、全員で、九州国立博物館に出かけます。

(守山惠子)