教員コラム6 「福岡と関西」2 二階堂整

Column 6 「福岡と関西」連載第2回 

 

前回のブログ(11月1日)で、福岡の高年層と若年層に、関西に対す好感度の大きな違いがあることを述べました。このことが次の調査で顔を覗かせました。

2007年度から2010年度にかけ、コミュニケーションギャップの研究プロジェクトに参加しました。例えば、関西から各地(東京・名古屋・広島・福岡)へ移住した方に、また、逆にそれらの地域から関西へ移住した方に、関西と移住先のコミュニケーションの違いをインタビューしたり、アンケート調査を実施しました。福岡での、関西からの移住者のインタビュー結果を2、3つ記してみます。

関西本社から福岡支社に転勤が決まった若手社員に、本社の上司たちは、(自分たちの過去の転勤の経験を踏まえ)「福岡に行ったら関西弁を話さないように。関西はあまり好かれていない」と助言してくれたそうです。こわごわ転勤してみたところ、まったく関係なく、「関西大歓迎、関西弁、大好き」の対応に戸惑ったそうです。これは前のプロジェクトの関西・関西弁に対す好感度の問題につながります。前の調査では、福岡の高年層と若年層に好感度の差があって、高年層はそれほど好感度を示さず、若年層は高い好感度を示す結果が出ました。上のエピソードはこの結果につながるものと思われます。おそらく、関西本社でかつて福岡に転勤した方は、福岡の高年層の人々と接触したでしょうから、関西・関西弁は歓迎されなかった。ところが、今は福岡では若年層を中心に関西弁に対す好感度が高く、大歓迎に至ったのではないかと思われます。

高校で関西から転校した二人の女子生徒(調査時は大学生)は、びっくりした思い出を語ってくれました。男の子と話していて、話の流れで、「今度、遊園地にいっしょに行こう」と言ったら、急に男の子の態度が変わってもじもじしたり、赤くなったり、はては「この話、内緒にしとこうな」。女子生徒は「?」の連続です。ただ友達として遊びにいくだけのはずなのに、なんでこんな反応するんだろう。なにを意識してるんだろう。ここには、福岡と大阪のコミュニケーションギャップ、相手との距離の違いが出ています。大阪では相手との距離が近く、「遊園地にいく」と誘うことは友人として普通で、別に特別のことではなかったのです。一方、福岡では、それに比べると、相手との距離がやや遠く、したがって、「遊園地に行く」と誘うことはぐっと距離を縮める行為であり、友人以上の関係とうけとられてしまったのです。この話が出たとき、聞いていた関西出身のもう一人の女性も「そうそう」と強くうなずいてました。

同じ日本人ですが、それだけに、コミュニケーションの距離の違いに我々は気がつきにくいのです。さて、福岡での関西・関西方言に対す好感度は、福岡の言葉にどんな影響をあたえたのでしょうか。

そのことは、また次のお話で。(二階堂整)