映画研究J 社会人講師による講義

 先週6月15日に「映画研究J」という科目に、「らくごえいが」という映画を製作された田中雄之プロデューサーが社会人講師としてお話をしてくださいました。
 大学を卒業されてから大手広告会社に就職。比較的大きな案件を扱っておられましたが退職されて東京芸術大学大学院に入学され、映画プロデューサーに転身されました。そういうご自身のプロフィールを紹介された後、田中プロシューサーさんの映画論を説明されました。
 すべてのここで紹介するわけにはいきません。印象に残った一部を紹介します。まず一番印象に残ったのは「観客主義」。作り手の思いをぶつけたような作品でもなく、お金儲けを優先した作品でもない、観客視線にたった作品作り、それが観客主義です。もちろん観客主義だからといって観客にこびるような作品というわけではありません。それは商業主義です。観客が娯楽としても情報としても本当に必要としている内容の作品を創るということ、簡単なようで難しい。
 映画だけでなく、マスコミやブランドショップにも作り手のおしきせ、金儲け優先の思想があります。現在の大部分のマスコミは視聴者が必要な情報ではなく、マスコミ関係者が「視聴者はこの情報を知るべきだ」という情報をつくりだしています。我々が欲しいスタイルの洋服ではなく、業界がつくりだした流行にしたがったスタイルの洋服。私なんて・・・具体的にこんなスーツが欲しい、というイメージがあるのに、そんなイメージにあったスーツなんて見つからない、なんて経験はしょっちゅうです。
 生活者としての観客の立場に立った映画作り。「らくごえいが」という作品は「徹底的な観客主義」にたって製作されたそうです。そしてこれからも徹底的な観客主義にもとづいて作品をつくられるそうなので、これから製作される作品が楽しみです。
 もう一つ、個人的に気に入ったのが「アクティブオーディエンスプロジェクト」。Active Audience Project。映画館でもっとアクティブに楽しめるような活動推進プロジェクト。現在の日本の映画館では、拍手したり、スクリーンに声をかけるなんてことはほとんどありません。笑いもこらえている場合があります。1960年代の映画館の風景をみると、多くの観客がスクリーンのスターに声をかけていました。拍手もしていました。
 いつのまにか・・・映画はおとなしく鑑賞するもの・・・なんてルールができてしまいました。もちろんわけもなく、騒ぐのは他の観客の邪魔になります。でも面白い場面で笑ったり、悲しい場面で泣くのは自然な人間の反応です。そういう反応が自然にできるように活動するプロジェクトです。反対する人は・・・・演劇とか歌舞伎とかそういう舞台を見たことがない人でしょうね。人間が演じる舞台で観客がなんの反応もしなかったら・・演技者の演技は・・・さめていきます。感動はうまれません。観客は演技者と一緒に舞台をつくっています。映画も同じです。せっかく大勢の観客がいる映画館で映画を鑑賞しているのですから、舞台と同じようにアクティブに反応すべきでしょう。

 現在、この講義の感想を読んでいます。う~む。ピンからキリまであります。でも多くの学生がこの講義を楽しんだようです。田中プロデューサーさん、いい講義を本当にありがとうございました。またお呼びしますので、よろしくお願いいたします。

(bunkei)
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百読百鑑レビュー これは2013年度入学の言語芸術学科の学生さんが、「百読百鑑」リストから作品を選び、その選んだ作品について書いたレビューです。

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