「百読百鑑レビュー」 『007 ロシアより愛をこめて』 by ぴよこまめ

監督       テレンス・ヤング

犯罪組織「スペクター」は、ソビエト情報局の美人女性情報員と暗号解読機「レクター」を餌にし、主人公である英国海外情報局の諜報員007ことジェームズ・ボンドを「辱めて殺す」事で両国に泥を塗り外交関係を悪化させ、その隙に解読機を強奪するという計画を立てていた。スペクターの幹部であるNo.3ことソビエト情報局のクレップ大佐は、真実を知らない部下の情報員タチアナ・ロマノヴァを騙し、暗号解読機を持ってイギリスに亡命する様、そして亡命時にはボンドが手助けすることが条件だという様に命令する。英国海外情報局のトルコ支部長・ケリムからタチアナの亡命の手助けを命じられたボンドは、罠の匂いを感じつつトルコのイスタンブルに赴いた。しかし、そこにはスペクターの刺客・グランドが待っていたのだ。

原作である小説は1957年に出版されており、その当時は冷戦でイギリスとロシアが緊張関係にあり、内容からもその部分が覗える。今回で映画二作目となる作品だが、前作よりさらにアクションを取り入れた大作となっている。冒頭の偽ボンド登場シーンやオリエント急行での対決、ヘリコプターで狙われ危機一髪!など見せ場が次から次へと登場する。歴代ボンドガールの中でも最も人気のあるダニエラ・ビアンキが出演しているので、出演者のキャラクターにもインパクトがあり、60年代の007シリーズの中では、飛びぬけて評価の高い作品だと思われる。さらに、ボンドの危機を救うこととなる支給品の秘密兵器がクライマックスで重要な伏線になること、何よりもオープニング・テーマの前に「プレ・アクション」が入るようになったことなど、この作品以降の007シリーズには必須になるパターンの多くが、本作で形作られた。

60年代という古い作品でソ連との冷戦という時代背景は、私にとっては実感しづらくリアリティのある作品として楽しむのは難しかった。しかし、オープニングの映像で女性の体にクレジットを映すという映像は今の私が見ても古臭くはなく斬新でかっこいい印象を持った。何作か見たことはあるが、毎回出てくるボンドガールの最低条件といえば美人でスタイルがいい、という感じであるが今作のボンドガールは知性とエレガンスを感じさせる風もあり、彼女がまたこの作品の魅力の一つにも思えた。そして、ボンドガールに対してまだこのころのボンドは少し手厳しいようなところもあり、そんなボンドが見られて新鮮で面白かった。エンディングのマット・モンローが歌う主題歌がタチアナの一時の恋とわかっていながら、今この瞬間を大切にしたいという心情と相まって素晴らしいといえるだろう。

もし今の時代にボンドのような人が私のそばにいるとしたら、親戚のおじさんに居たら色んな冒険談を話してくれるおじさまで楽しいかもしれない。彼氏にはちょっと…。

百読百鑑レビュー これは2013年度入学の言語芸術学科の学生さんが、「百読百鑑」リストから作品を選び、その選んだ作品について書いたレビューです。

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