宮沢賢治の代表作である「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治の妹トシの死から2年後に初稿が成立したと言われる作品である。主人公のジョバンニが、友人カムパネルラと共に銀河の不思議な旅をするという幻想的な物語。
ジョバンニの父は漁に出たまま戻らず、母は病院で寝たきり状態。苦しい家計を支えるために学校に行きながら働き生活している。銀河祭りの晩、丘の上で寝ていたジョバンニは気付くと銀河鉄道に乗っており、前の席にはカムパネルラがいた。2人は銀河の幻想的な旅に出る。そこで様々な出会いと別れを経験する。その中で、沢山の生き物を殺して生き延びたさそりが「ほんとうのみんなの幸」を祈り輝く星になったという話を聞く。ジョバンニは「ほんとうのみんなの幸」を探すためにどこまでも一緒に行こうとカムパネルラに言うが彼は消えてしまう。目を覚ましたジョバンニは、カムパネルラが命を犠牲にして友人を助けて死んだことを知る。
この物語で賢治が伝えたかったことは人々の幸せ、そして死ではないかと思う。妹トシとカムパネルラを重ねてこの作品を読み返してみると、奥深く感じられる。賢治にとって妹トシは大切な存在であった。2人の関係はジョバンニとカムパネルラに似ている。また、賢治は星を見たりするのが好きだった。そのため、他の作品にも「双子の星」や「よだかの星」など星についての作品が多い。その中で銀河鉄道に妹トシをかさねたと思われる。銀河鉄道という幻想的な列車に夢や希望を乗せて2人で旅をするが、そこには別れや悲しみもあった。カムパネルラの死にトシの死を重ねて表現し、その悲しみを伝えているように感じる。「世界中の人々が幸福でなければ、自分の幸せはない」と考えていた賢治は、その思いと大切な存在を失った悲しみを銀河鉄道に乗せて、本当の幸せを探し、1人でも多くの人を幸せにしたかったのだろう。このように銀河鉄道の夜は賢治の気持ちを表した作品であり、読者にも本当の幸せを探してほしかったのかもしれない。