「百読百鑑」レビュー 『オペラ座の怪人』 by ぴーちこ

 

『オペラ座の怪人』監督:ジョエル・シューマカー。キャスト:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサムジェラルド

オペラ座の地下に隠れ住んでいる男が、美しい心と声を持つクリスティーヌに出会い恋に落ちる話。

オペラ座の怪人ことファントムは、生まれつき顔に痣があり、それが原因で親に捨てられ見世物小屋で育った。その見世物小屋で日々ひどい扱いをうけていたファントムは、ついに自分を見世物にして荒稼ぎしているその男を殺してしまう。その一連を偶然見ていた、当時オペラ座の寄宿生であったマダム・ジリーはファントムを連れ出しオペラ座の地下で匿(かくま)った。そして時は経ち、ファントムはオペラ座の地下での生活を続ける内に建築やデザイナー、オペラの脚本などをこなす天才へと成長していった。

しかし、そのことを知っているのは当人達だけであった。オペラ座の地上で暮らしている寄宿生や支配人達は、姿は見せないものの脚本などをこなしオペラ座を牛耳るファントムに怯えていた。その上、莫大な給料を要求したり、気に食わないことがあると嫌がらせをするファントムはみんなの疎まれ者だった。そんなファントムであったが、ある日寄宿生としてやって来た美しい声を持つクリスティーヌに心惹かれ、溺愛し幼いうちから歌を教えた。クリスティーヌは、姿は見えないものの優しく歌を教えてくれるファントムのことを天使と呼び、その心安らぐファントムの声に亡き父の姿を重ねながら師として慕った。

ある日、オペラ座に、スポンサーとして幼い頃クリスティーヌと恋人同士であったラウルが訪ねてくる。若くて美しいラウルとクリスティーヌは忽ち恋に落ちていく。その様子を見ていたファントムは遂にクリスティーヌの前に姿を現してしまう。そして、彼女を自分のものにする為に、誘拐したりラウルと戦ったりを繰り返す。だが、そんなファントムをも彼女は受け入れ愛していた。しかし、ラウルを人質にとり、地下で一緒に生きていくことを強要した事で遂にファントムに愛想を尽かしてしまう。そんな彼女を見たファントムは身を引く決意を固め、ラウルとクリスティーヌをそのまま地上に返し自分はオペラ座から姿を消すのであった。

人間は、自分の殻から出ることを恐れ自分以外の考えや選択を疎むくせに、自分の知らない眩しい世界に憧れを抱き殻から出られない自分をも疎みながら生きている。という事だと思う。ファントムの場合は、普通に生活出来ないほどに醜い顔という自分を縛り付ける絶対的要因があり、私の様な平凡な人間とは比べ物にはならないかもしれない。しかし、誰しもいいと思っているからこそ自分がそう有るわけで、自分にないものに興味を抱くものの、それにチャレンジできない事から憎しみという感情に至るまで変貌を遂げるということは、珍しい事ではないと思う。

百読百鑑レビュー これは2013年度入学の言語芸術学科の学生さんが、「百読百鑑」リストから作品を選び、その選んだ作品について書いたレビューです。

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