裕福な家庭に育った葉蔵は、本能である「空腹」という感覚すら知らない。人間の営みと言うものがわからないことに大変な不安を持つ彼は、自分一人が何も分かっていないという恐怖に襲われる。そしてそれをごまかすため「道化」を演じるようになる。中学でも道化を演じる葉蔵だが、その葉蔵の道化を見破る少年竹一に出会う。その後上京し、高校に入学。彼は、画学生堀木と知り合う。堀木と遊び回るうちに、カフェの女性と知り合い、ある事件を起こしてしまう。家からも勘当された葉蔵は、堀木の家で知り合ったシヅ子という女性の家に居候を始めるが、ふとしたことでシヅ子の家を出ていく。その後何人かの女性の家を転々とするが、そのうち葉蔵の生活は乱れ、再び事件を起こす。 内容がとても重苦しく、一度読んだだけでは理解し難い。薬や女に溺れて堕落し*ていく葉蔵に嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。しかし誰でも一度は葉蔵と同じような経験をしたことがあるのではないだろうか。わざと道化を演じたり、本心をさらけ出すのが怖いと感じることは誰もが経験していることだと思う。何度か読み返したり、深く考えていくうちに、葉蔵の繊細な部分が見えてきておもしろいと思えてくるのではないだろうか。