牧教授コラム 『ほどほど』

   『ほどほど』
 卒業(園)そして入学と、その時期にあるご家庭ではあわただしい日々が続いていることだと思います。中でも幼稚園、保育園から小学校への入学は、これから始まる学校生活というなんとも言い表しようのない環境の変化に、不安と期待交錯していることでしょう。これまでももちろんですが、これからは更に親としてのあり方が問われてくるような感じを受けるものです。宿題はちゃんとやっているか、忘れ物はないか、勉強にはついていけるか、友達関係はちゃんとできるか・・・・等々。
 この春に初めてわが子を小学校へ入学させる親にとってはこの不安なおさらのことです。わが子の成長を喜ぶ反面、不安も同時に押し寄せてきます。そして、つい「完璧な親であらねばならない」(自らそれを意識しているわけではありませんが))という強迫的ともいえる気持ちから、さまざまな言動がわが子に向かって浴びせかけられることになります。「宿題は終わったの?」「忘れ物はないの?」等々・・・・そして最後のダメ押しは「ダメねー!」。挙句の果てには父親にまで飛び火し、「あなたも何とか言って!」まで。そんな時ちょっと我に返って「自分の子どものころは?」とか、「子どもの人生はこれから・・・・」などと心の中でささやいてみたらいかがでしょう。
 そして『Good enough mother』(ほどほどによいお母さん)でいい・・・・、というよりその方が子どもにとってはより良い母親になれると考えてほしいのです。理想的なお母さんになろうとしても、イライラを繰り返すばかりで、親子共々追い込まれることになってしまいます。子どもの、同時に親としての理想像を追い求めるより、ふだんの自分どおりに子育てしているほうが、子どもにとってはよい親になれるのです。
 特に日本は何でも頑張ることを美徳とする社会であることは間違いありません。頑張ることは悪いこととは言いませんが、過ぎるとお互いが息苦しくなってしまい、虐待や家庭内暴力という不幸を招いてしまうことにもなりかねません。『Good enough mother』ほどほどでいいのです。その方が子どもは自由になれます。自らが歩む道も自らの責任で決めることができます。全ては「ほどほどに・・・・」で。(09.3.20佐賀新聞掲載)
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