福岡女学院大学 トップページ > 学部・学科 > 人文学部 言語芸術学科 Today2 >  言語芸術学科 Today > 2013年2月

人文学部 言語芸術学科 言語芸術学科 Today

2013年2月 一覧

2013年02月19日

「百読百鑑」レビュー 『 人間失格 』大宰治 by チョコちゃん


裕福な家庭に育った葉蔵は、本能である「空腹」という感覚すら知らない。人間の営みと言うものがわからないことに大変な不安を持つ彼は、自分一人が何も分かっていないという恐怖に襲われる。そしてそれをごまかすため「道化」を演じるようになる。中学でも道化を演じる葉蔵だが、その葉蔵の道化を見破る少年竹一に出会う。その後上京し、高校に入学。彼は、画学生堀木と知り合う。堀木と遊び回るうちに、カフェの女性と知り合い、ある事件を起こしてしまう。家からも勘当された葉蔵は、堀木の家で知り合ったシヅ子という女性の家に居候を始めるが、ふとしたことでシヅ子の家を出ていく。その後何人かの女性の家を転々とするが、そのうち葉蔵の生活は乱れ、再び事件を起こす。

内容がとても重苦しく、一度読んだだけでは理解し難い。薬や女に溺れて堕落し*ていく葉蔵に嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。しかし誰でも一度は葉蔵と同じような経験をしたことがあるのではないだろうか。わざと道化を演じたり、本心をさらけ出すのが怖いと感じることは誰もが経験していることだと思う。何度か読み返したり、深く考えていくうちに、葉蔵の繊細な部分が見えてきておもしろいと思えてくるのではないだろうか。

投稿時間:2013年2月19日 11:46 | 固定リンク

2013年02月19日

「百読百鑑」レビュー 『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 by ユキ

 

 宮沢賢治の代表作である「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治の妹トシの死から2年後に初稿が成立したと言われる作品である。主人公のジョバンニが、友人カムパネルラと共に銀河の不思議な旅をするという幻想的な物語。

 ジョバンニの父は漁に出たまま戻らず、母は病院で寝たきり状態。苦しい家計を支えるために学校に行きながら働き生活している。銀河祭りの晩、丘の上で寝ていたジョバンニは気付くと銀河鉄道に乗っており、前の席にはカムパネルラがいた。2人は銀河の幻想的な旅に出る。そこで様々な出会いと別れを経験する。その中で、沢山の生き物を殺して生き延びたさそりが「ほんとうのみんなの幸」を祈り輝く星になったという話を聞く。ジョバンニは「ほんとうのみんなの幸」を探すためにどこまでも一緒に行こうとカムパネルラに言うが彼は消えてしまう。目を覚ましたジョバンニは、カムパネルラが命を犠牲にして友人を助けて死んだことを知る。

 この物語で賢治が伝えたかったことは人々の幸せ、そして死ではないかと思う。妹トシとカムパネルラを重ねてこの作品を読み返してみると、奥深く感じられる。賢治にとって妹トシは大切な存在であった。2人の関係はジョバンニとカムパネルラに似ている。また、賢治は星を見たりするのが好きだった。そのため、他の作品にも「双子の星」や「よだかの星」など星についての作品が多い。その中で銀河鉄道に妹トシをかさねたと思われる。銀河鉄道という幻想的な列車に夢や希望を乗せて2人で旅をするが、そこには別れや悲しみもあった。カムパネルラの死にトシの死を重ねて表現し、その悲しみを伝えているように感じる。「世界中の人々が幸福でなければ、自分の幸せはない」と考えていた賢治は、その思いと大切な存在を失った悲しみを銀河鉄道に乗せて、本当の幸せを探し、1人でも多くの人を幸せにしたかったのだろう。このように銀河鉄道の夜は賢治の気持ちを表した作品であり、読者にも本当の幸せを探してほしかったのかもしれない。

投稿時間:2013年2月19日 10:23 | 固定リンク

2013年02月18日

「百読百鑑」レビュー 『恋に落ちたシェイクスピア』 by チャーシュー小力

監督をジョン・マッデン、脚本はトム・ストッパードが手がけるアメリカ映画である。主演はグウィネス・パルトローとジョセフ・ファインズが務め、第71回アカデミー賞を始め、数々の賞を受賞している。

舞台は劇場の閉鎖が相次ぐロンドン。新作劇『ロミオと海賊の娘エセル』の上演準備を行っていたウィリアム・シェイクスピアの前に、役者に憧れる資産家の娘ヴァイオラが男装をし、トマス・ケントと名乗り、現れる。そしてその演技力を買われ、ロミオの役を得る。シェイクスピアはやがてトマス・ケントがヴァイオラだということに気付く。既婚者であるシェイクスピアと、娘としての務めを果たすために貴族であるウェセックス卿との結婚を前にしていたヴァイオラは決して結婚できない関係であるにも関わらず忍んで会う仲となる。二人の恋は果たして喜劇に終わるか悲劇に終わるかが問われるラブストーリーである。

ウィリアム・シェイクスピアといえば、『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』など有名な作品を巧みな言葉の数々とともに生み出した劇作家、詩人であるため、まず私がこの『恋に落ちたシェイクスピア』という映画のタイトルを見たとき、どんな言葉たちが恋を彩っていくのだろうかととてもわくわくした。やはりシェイクスピアは私を裏切らず、多様な言葉でヴァイオラを口説き、私も惚れてしまいそうなほどだった。その中でも特にトマス・ケントがヴァイオラだと知らずにシェイクスピアがヴァイオラのことを話すシーンが魅力的だった。せめて映画の中だけでも素敵な恋がしたい!という人にぜひおすすめしたい映画である。

投稿時間:2013年2月18日 13:18 | 固定リンク

2013年02月12日

「百読百鑑」レビュー 『たけくらべ』 by ぴよこまめ

「たけくらべ」とは、背丈や思いの丈を競うという意味で、題名の通り十代の少年少女の成長が、吉原遊郭周辺に住むのちに遊女となる大黒屋の美少女・美登利と僧侶の息子・信如の恋愛を軸に描かれている。話は八月の夏祭りから始まり十一月の酉の市でクライマックスを迎えるが、最後には彼らが夏祭りで見せていた子どもらしさは消え、大人へと成長している。この地域の子どもたちは親と同じ職につくという決められた将来に少しも疑問を抱いていない。しかし、美登利と信如だけは親の後を継ぐことに疑問を持っている。二人は同じ学校に通っており、意識し合う仲であったが、そのことを友達にからかわれた信如は美登利を避けるようになり、それを知らない彼女は信如が自分に意地悪になったと思い込んでしまう。子どもたちは表町組と横町組に別れて対立しており、美登利と信如は別々の組にいて、二つの組の喧嘩によってさらに二人の仲は疎遠となってしまう。

中でも印象深いのは、雨風が強い日に、信如の下駄の鼻緒がたまたま美登利の家の前で切れてしまい四苦八苦している中、美登利が端切れを渡す場面である。信如に気付き顔を赤らめ端切れを彼の元へ投げる美登利と、それを「ゆかしい」と感じながらも受け取ることができず立ち去る信如とのせつなく不器用な恋は思わず「じれったい!」と言ってしまうほどで、雨の中に残された端切れに哀愁を感じる。

造花の水仙が美登利の家に差してあり彼女がそれを手にとりいつくしむ姿で物語は終わるが、その花には信如との思い出が詰まっている。後からわかることだが、その日はまだ先と言われていた信如が僧になるための学校に入る前日のことである。まさに二人が不器用ながらにも想い合う姿こそが「たけくらべ」なのであろう。

まずは現代語訳で読むのもいいが、この作品の持ち味や独特の雰囲気を感じるためには、ぜひ原文で読んでみるべきであろう。

投稿時間:2013年2月12日 14:22 | 固定リンク

2013年02月12日

「百読百鑑」レビュー 『オリバー・ツイスト』 by ゆーちゃん

主人公のオリバー・ツイストはある事情があって救貧院で育てられることになった。9歳になったオリバーは孤児たちと共に過酷な労働をさせられる。しかし満足できる食べ物などは与えられない。子どもたちはとなりに寝ている子を食べてしまいそうになるくらいお腹を空かせている。

ある晩、おかわりを頼む者をくじ引きで選ぶ。そしてそれはオリバーに当たる。その晩、鉢と匙を手にし賄係りのところへ行き、オリバーは言った。「すみませんが、もっと欲しいんです。」賄係りはオリバーの頭を殴り、教区史に言いつけた。

翌朝、門の外にオリバー・ツイストを引き取ってくれるものには5ポンドの報酬を出すという掲示が張り出される。それを見た煙突掃除夫のガムフィールド氏が 申し込む。だがオリバーは怖くて怖くて怯えた顔をしていた。それを見た老紳士は「こんなことは絶対によくない」と言い、オリバーを救貧院に戻させた。次に 葬儀屋のサワベリー氏が申し込み、引き取られることになるがオリバーはひどい扱いをうける。そこでオリバーは逃亡することを決意する。

その逃亡する先で起こることは本でお楽しみください。

この作品は映画化もされており、とても切ない話だ。オリバーはもちろんかわいそうだが、わたしはスリの窃盗団のフェイギン一味の子どもたちもかわいそうだ と思う。なぜフェイギン一味となってしまったのか。それからオリバーと共に過酷な労働をさせられていた子どもたちの運命はどうなっていくのか。

子どもにこそたくさんの未来や夢が待っているのに、大人たちはひどい扱い、差別をする。しかし、人間は無意識に差別をしてしまうもの。わたしたちも無意識 のうちに差別をしているのだと思う。差別がこの世からなくなればどんなに幸せだろう。しかし、少しでもそう思う人がいるだけで少しでも違うのだと思う。オ リバーが最後に捕まったフェイギンのところに挨拶に行くところは、オリバーの優しさが出ている場面だと思う。常に差別のことを考えるわけにはいかないが、 気にとめることを大事にしたいと思う。

投稿時間:2013年2月 5日 12:46 | 固定リンク

1234