元英国首相トニー・ブレアは演説の中で言いました。
政府の最優先課題を3つ挙げろと言われたら、私はこう答える。教育、教育、教育だ。
ブレアがこういう演説をしたのにはわけがあります。英国の教育水準の低さ、特に労働者階級が集中する地域のそれは惨憺たるものだったのです。
この政策は徹底的に実行されました。英国で小学校の教師をしている私の知人は、査察官がやってくる2日間、学校にカンヅメになり、その前後おそらくは彼女の生涯でももっとも緊張した日々を送りました。査察官の来る日はちょうど彼女の誕生日に重なっていましたが、お祝いは本人抜きで行われました。たまたま英国にいた私は、その不思議な誕生パーティを彼女の子どもたちと一緒に過ごしたことを鮮明に記憶しています。
ブレアの教育政策がどの程度効果を挙げたかということについては、後世の評価を待たねばならないでしょう。しかし、「教育、教育、教育」を最優先課題としたブレアの姿勢は間違っていなかったと思います。教育が国民を豊かにし、ひいては国全体を豊かにするという信念に裏打ちされているからです。もちろんここにいう豊かさは、「心の豊かさ」などというなまやさしいものではなく、ずばり経済的な豊かさを指しています。
英国とわが国の状況は大きく異なりますが、われわれも同じ地点に立って考えなければならないと信じます。経済的な豊かさを獲得しようと思う人ほど、最も遠いイメージから入るべきなのです。
生涯学習センターは、カルチャーセンターを目ざしてはいません。それどころかカルチャーセンターから最も遠いイメージのものを構想しています。ブレアの言葉をもじってこう宣言したいと思います。「教養! 教養! 教養!」と。 |