■2008年度 特別公開講演会「オランダ文化とキリスト教」■2008.09.20 福岡女学院大学生涯学習センター 「オランダ法文化とキリスト教」 古川照美(福岡女学院大学学長) 大航海時代、世界の海を東西に二分し通商航海独占権をローマ教皇から付与された二大列強のうちスペインの無敵艦隊を当時の発展途上国オランダとイギリスの連合軍が撃破したのが1588年。それから5年後、今度はもう一方の大国ポルトガルの商船カタリナ号をオランダの商船隊が海上捕獲した。 この捕獲の正当性を法の次元で論証しようとしたのが、オランダの学者フーゴー・グロテイウス(Hugo Grotius, 1583-1645)である。彼は、海洋は流れる水や空気や太陽の光と同じように占有することのできないものである、と言う。このような広大無辺で無尽蔵なものは「人類の共有物」であって、個人の私的所有や国家による領有の対象とはならない、と説いた。 ポルトガルが主張するインド貿易の独占権を反駁し、キリスト教に基盤を置く自然法の理論を駆使し聖書を随所に引用して公海が人類に開かれた自由の海(Mare liberun)であることを力説したのである。 オランダ・ベルギー国周辺の西洋美術」 金藤完三郎(福岡女学院大学教授) 西洋絵画の代表的な表現技法は油彩画であるが、東洋の墨と水が中心の表現とは大きく違う面をもっている。油彩画は水をとても苦手とする技法だ。その源流はフランドル地方とよばれるオランダ・ベルギー国周辺といわれている。後期印象派で有名な画家ゴッホはオランダ出身だが、ファンの多い印象派の絵画は発展した油彩画技法によって支えられていた。現在でも美術表現の中核として人気を誇っているこの技法の発展を概観することで、まだ紹介される機会が少ない初期油彩画の力強く静かな魅力と、その後の流れを絵画鑑賞もまじえて鷲づかみに楽しんでいただきたい。 |